眼科
OPHTHALMOLOGY
当院では、毎月第4水曜日に眼科専門医による診察を行っています。
診察は完全予約制となり、診察予約数には限りがあります。
予約前に必ず一度一般外来へ起こしいただき、当院の獣医師の診察を受けていただくようお願いいたします。
当院で行っている検査を一部ご紹介します。
1. スリットランプ検査
スリットランプ検査
細長い光を眼に照射することで、外側から内側まで、眼球の様々な構造を覗くことができます。
2. 眼底検査
倒像鏡による眼底検査
倒像鏡を使用して、眼球の内壁を覆う網膜や脈絡膜、視神経を観察します。
何か異常があった場合、当院では眼底カメラを使用して記録に残し、オーナー様にも一緒に確認していただくことができます。
眼底カメラによる眼底検査の様子と撮影された眼底
3. 眼圧測定
緑内障を疑う子では必須の検査です。
4. フルオレセイン検査
フルオレセイン検査に使用する検査紙
眼球表面を覆う角膜に傷がないかを調べる染色検査です。傷がある部分は青色光で緑色に発色します。
5. シルマー検査
試験紙を下まぶたに挟んで涙液量を測定します。
乾性角結膜炎など涙液量が減少してしまう病気の診断に使用します。
6. 超音波検査
眼球にプローブを当て、超音波で眼球内部と眼窩の構造を描出します。水晶体脱臼、網膜剥離、眼内・眼窩の腫瘤などの発見に役立ちます。
当院で最も多く出会う病気、「角膜潰瘍」、「緑内障」、「白内障」について
角膜潰瘍
角膜は、眼球の表面を覆っている透明な膜で、涙液によって保護されています。この角膜が破壊されて深く傷ついてしまった状態を、「角膜潰瘍」と呼びます。
こんな症状に要注意:目ヤニが出る、目をしょぼしょぼさせる、涙を流す、充血している
潰瘍が角膜の奥の層まで到達しているほど重症度が高くなり、最悪の場合、潰瘍が角膜を貫通して眼球内部まで到達してしまう「角膜穿孔」に至って失明することもあります。
角膜表面の上皮の細胞は1週間ほどで自然にターンオーバーしていますが、何らかの原因で、①破壊が過度になる、あるいは②保護・再生力が低下する場合には、ターンオーバーが追いつかず、潰瘍が生じてしまいます。
具体的な原因としては、次のようなものがよく見られます。
①外傷、眼瞼内反、睫毛の異常、シャンプーやドライヤーの熱などによる刺激
②ドライアイ、短頭種の兎眼、角膜ジストロフィー、角膜変性症、糖尿病などの全身性疾患
スリットランプ検査、フルオレセイン染色検査、血液検査 など
軽度の場合には、抗生剤、ヒアルロン酸、抗コラゲナーゼ薬、血清などの点眼薬による内科療法で治癒を待ちます。
内科療法のみで治りが悪い場合、眼瞼を縫って眼を閉じる手術(眼瞼縫合術)やコンタクトレンズの装着を行い、角膜を保護します。
さらに重度の子、すでに失明してしまっている子に対しては、最終的に眼球を摘出することで、苦痛を取り除きます。
緑内障
犬猫の緑内障は、眼圧の上昇により視神経が障害されて、失明を起こす病気です。
こんな症状に要注意:眼をしょぼしょぼさせる、涙を流す、充血している、瞳孔が開いている、眼の表面が白く濁っている、元気食欲がない、眼球が異常に大きい
眼球の中には眼房水と呼ばれる水が循環していて、眼球内に溜まる眼房水の量が多くなると眼圧は上昇します。
眼房水が増えるのは、眼球からの排出がうまく出来なくなったとき、あるいは新たに作られる眼房水の量が増えたときです。
また、他に病気がなく単体で緑内障が起こっている場合を①「原発緑内障」、何か他に別の病気があって二次的に緑内障が起こっている場合を②「続発緑内障」と呼びます。
犬ではどちらもよく起こりますが、猫ではほとんどが続発緑内障であると考えられています。
①原発緑内障
先天的な異常や加齢によって眼房水の流出路が狭くなることで起こります。
中高齢の、次のような犬種で起こりやすいです。
柴犬、シー・ズー、アメリカン・コッカースパニエル、ゴールデンレトリバー、ビーグル、プードル など
(日本では柴犬での発生が特に多いと言われています)
②続発緑内障
次のような病気に続いて起こります。
白内障、水晶体脱臼、白内障手術後、特発性ぶどう膜炎、眼内出血、外傷、虹彩黒色症、網膜剥離
眼圧測定、スリットランプ検査、眼底検査
続発性の場合必要に応じて:超音波検査、フルオレセイン検査、血液検査 など
原発緑内障の場合、病気の段階によって治療法が異なります。発症から間もない急性期は、点眼薬で速やかに眼圧を下げることが重要になります。
慢性期になり、網膜や視神経が障害されたり、眼球が拡張してしまったりといった元に戻せない異常が出てきてしまった場合には、治療の目的はこれ以上の痛みや不快感を取り除いてあげることになります。
そこで当院では、眼球摘出術や強膜内シリコン義眼挿入術などの外科手術を行います。
眼球を完全に取り除いてしまうので、二度と眼の病気に悩まされることはなくなります。
眼球の外層を形作る角膜と強膜は残し、眼内の内容物を除去して代わりにシリコン製の義眼を入れる手術法です。眼球摘出術と違い、術後の外観を保つことができます。
欠点として、術後に涙液量が減少して乾性角結膜炎を生じることがあります。
白内障
白内障とは、水晶体が白く濁ってしまい、ものが見えづらくなる病気です。
水晶体は眼の中でレンズの役割をしており、外からの光を集めてピントを合わせるはたらきをしています。
こんな症状に要注意:眼が白っぽく、あるいは青っぽく見える、物によくぶつかる
加齢、外傷、遺伝、放射線、先天性、糖尿病など
スリットランプ検査、眼底検査、眼圧検査、超音波検査など
実は、肉眼で水晶体が白っぽく見えたとしても、必ずしも白内障とは限りません。
病気ではなく、「核硬化症」と呼ばれる加齢性の変化である場合もあるので、一度しっかりと検査を受けてみることをお勧めします。
現在のところ、いちど白内障になった眼を再びよく見えるようにするためには、外科手術以外に方法はありません。
当院では、外科手術を希望するオーナー様には、眼科専門病院をご紹介させていただいております。当院では主に内科療法による治療を行っています。
白内障の内科療法で最も重要なのは、合併症の予防です。
白内障の子では、診断から平均17ヶ月以内に「水晶体起因性ぶどう膜炎」と呼ばれる炎症を起こし、痛みを感じたり、網膜剥離などにより失明を起こしたりすることがあります。
水晶体の濁りが進んで眼が見えなくなってしまうと、それ以上の治療を諦めてしまう飼い主さんが少なくありませんが、視覚を失った後でも、合併症による苦痛を取り除いてあげる治療が必要になります。
充血やまばたきが多いなどの症状が出ていたら、要注意です。
ぶどう膜炎は、抗炎症薬の点眼や内服により治療します。
一度ぶどう膜炎を発症した子は、その後も再発防止のためずっと点眼を続けていくことがあります。その他、老齢性の初期の白内障の子では、進行を遅らせる点眼薬を使用する場合もあります。